おせちとはもともとお正月だけではなく桃の節句や端午の節句などの行事でだされる料理のことでした。
そのうち最も大切なお正月に食べる料理だけをおせちと呼ぶようになったのです。

これは日本の農耕文化と関係があるようです。

年神様をまず、お招きすることでもって年神様のためにおせち料理を作ります。
年神様をお招きして私たちがお正月のおせち料理をいただくというわけです。

おせちが一般に食べられるようになったのは江戸時代からです。
食材を積み重ねた食積(くいつみ・蓬莱飾り)という飾りと酒の肴の重詰めを用意しました。


近代になってこの2つが一緒になり重詰めのおせちになりました。

1960年代(昭和40年頃)には百貨店でおせちが販売されるようになります。
そして今やおせちの売り出しは年末の恒例行事となりました。

料理や器の種類もバラエティ豊かになり、おせち百花繚乱の時代です。

見て美しく食べてめでたいおせち料理――。
そこには日本人が大切にしてきたものがぎっしり詰まっています。


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おせち料理に大切な彩りの意味

おせちの見所はたくさんの料理が重箱いっぱいに盛り込まれた景色です。
しかし、ただ詰めればいいというものではありません。

まず気を配るのは色の取り合わせ。

赤、青、黄、白、黒と食材の基本的な五つの色で華やかな彩りにします。
徳川家光の時代に取り組まれた五色不動や陰陽道の五行思想からこの彩りがきているのかもしれませんね。

最も大切なのは、隙間を作らないこと。ぎっしり詰まった重箱は豊かさの象徴なのです。

料理を隙間無く詰めることで生まれる、幾何学的な美しさ。
この緻密な技法を行儀盛りと呼びます。

おせちを重箱に詰めるのはなぜ?

おせちで重箱を使うのは、めでたさを重ねる、という縁起担ぎです。
地域や家柄によっても違いますが、重箱は五段重ねが正式とされます。

それぞれの段にどんな料理を詰めるかは、地方や家によってさまざまです。

■ 一の重

多くの場合、一の重は祝い肴と呼ばれる、酒の肴が中心です。
黒豆・かずのこ・田作りなど、おせちの顔ともいえる料理が並びます。

■ 二の重

二の重は、栗きんとん、紅白かまぼこ、厚焼き玉子などの甘い料理が中心。
かつて砂糖が貴重だった時代のごちそうの名残です。

■ 三の重

三の重には、マナガツオの味噌、焼きや鯛の生ずしなど、魚料理が並びます。
これは海の幸を表します。

■ 与の重

四つ目は、レンコンやクワイの煮しめを盛った山の幸。
四という数字を嫌って「与の重(よのじゅう)」と呼びます。

■ 五の重

最後の五の重。
空の重や控えの重とも呼びます。

さて、ここには何の料理が入っているでしょうか?
正解は……なんと空なのです。

来年はこのお重が埋められますようにという願いながら開けておく五の重。
そこには全てを埋め尽くさない奥ゆかしさが感じられますね。

「神様の服をここに詰める」という意味もあります。


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おせち料理の具材の意味とは?

かずのこ、黒豆、田作り。
おせちの中でもとりわけよく知られるこの料理は、三つ肴と呼ばれます。
ただおいしいから食べるのではありません。実は、料理の名前が大事なのです。

一例を紹介します。

それにはどういう意味があるかというと
まず数の子は子孫繁栄、子だくさん。

それから黒豆は黒くまめに働くという意味や、元気でなければいけないといった意味。

田作りというのは魚でいえばカタクチイワシ。
これはどこでも手に入る魚です。

また、かつて田畑の肥料だったことから豊作という意味があります。
子どもがたくさんいて労働力になり、それが豊作につながるということは国が豊かになるという意味です。

錦卵は故郷に錦を飾る。
巻物、だて巻きとか昆布巻きは文化を表します。

昔の読み物は巻物だから、そういうところに縁起を担いでくるのです。

それから、ふだん食べる物と違うので
やはり意味がなければいけません。
言霊信仰的な物がなければいけないわけです。


言霊とは、ことばに宿る力の事です。
声に出すと現実に影響をもたらすと信じられてきました。
例えば、神道の祝詞はめでたく美しい言葉で綴られます。
日本では、よい言葉は幸運を、不吉な言葉は不幸を招くとされました。

おせち料理の名前は、そうした考え方が表れています。

おせち料理は具材の切り方や調理法にも意味が!

意味を与えるのは、名前だけではありません。調理の仕方も大切です。

黒豆の色と艶にはいつまでも黒く日に焼けまめに働けるようにという願いが託されています。
艶やかな黒豆を作るには、表面のしわは禁物。煮立たせず、弱火でじっくり炊きあげます。

田作りの材料はカタクチイワシの稚魚。

かつて田畑の肥料だったことから、豊作を祈願する食材として取り入れられました。

大事なのは頭を残すこと。おせちでは尾頭付きにこだわります。
尾も頭もついた尾頭付きには徹頭徹尾全うする、という意味があります。


もう一つ、食材に意味を託すのが飾り切りです。
野菜を祝い事に相応しい形にします。

人参で梅の花の形を作ったり、クワイは細かい切り込みを入れて松ぼっくりの形にしたりします。
他にも、六方や鈴に見立てた飾り切りにしたりもします。

芽を残すことで「めでたい」を意味します。このクワイの装飾は、おせち料理独特です。

おせち料理の起源と原点とは?

名前や色、そして形。なぜおせちは、ここまで意味にこだわるのでしょうか?

おせち料理の起源は日本人が米を作り農業を盛んに始めた頃からで紀元前2~3世紀に始まります。

当時の人達は四季折々に収穫される産物の喜びを神に感謝することによって、単調になりがちな生活に節目をつけました。

この季節の節目に収穫物を神に供えることを「節供(せちく)」といいます。
供えたものを料理して豊作、大漁を願い、自然の恵みに感謝して食べる料理を「節供料理」

これがおせち料理の始まりです。

言霊信仰=シャレとは違います。

その中に願いを込めていなければいけません。

だから神とともに食事をしていると考えれば、願いということが通用してくると思います。

そこで下手すると現代の若い方はダジャレだと言うかもしれませんが、そのぐらい生きることに大事だったのです。

生きる事が、今よりもずっと困難だった時代。
健康で幸福に長生きすることは、一番の望みでした。

おせちには、人々の切なる願いが込められていたのです。

まず、神様に最初にお食べ頂いて、私どもが食べるということ。

お正月の料理というのは基本的にはそこの始まりというところだと思います。

食べ物こそが人間が生きるための基本であるので収穫にこだわります。
またそのために豊作をお祈りするという前提条件ですので、そちらがあって初めて収穫に感謝するという2つの大きな意味があります。

収穫に感謝し、その実りを神に捧げるという思いは、現代にも受け継がれています。

今年も、豊かな実りを、ありがとう。
1年のはじめ、自然へのあふれる感謝の思いを日本人はおせちという形に表してきたのです。

「神への感謝が「おせち」の原点」と言えるのではないでしょうか。


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